INAIR M360bt

イヤホンでもない、ヘッドホンでもない、もちろんスピーカーでもない、音楽を聴くための新しいイヤーデバイスという謳い文句で注目のイヤースピーカー、INAIR M360のレビューツアーに参加させていただきました。しかもいつものレビューツアーが、対象の品々が参加者から参加者へと郵送されるのとは違い、INAIRの企画開発・プロダクトデザインそして販売するアンドカラーの代表である佐川大介氏自らが、レビュー参加者と会って商品に対する思いを直接に聞かせていただけるという滅多に無い機会ということで、これは参加するしかないなと。でも考えたら、当方は関西しかも大阪と違って京都在住ということで、なかなか関東から来ていただくのは無理だろうから結局は郵送で商品をお借りする感じかと思っていました。ところが、佐川氏が所用で京都にお出でになるということで、先日、観光客で賑わう京都駅の近くのカフェで約2時間、INAIR M360に対する熱い思いを聞かせていただきました。残念ながら聞き手の私が技術的な知識が無いことに加え、あまり人とのコミュニケーションに長けていないため、佐川氏の思いの半分も理解できなかったかもしれませんが、その商品に対する思いも頭の端っこに置きながら、レビューさせていただきたいと思います。

 

佐川氏は他のINAIR M360のレビュー記事でも紹介されている通り、Western Electric製品の修理やメンテナンス等に携わり、その後様々なデジタルがジェットや音響製品の企画・開発に携わってこられてということです。

(余談ですが、一時流行ったiPodのドック兼用スピーカーにも佐川氏が企画された製品があり、その商品画像を見せていただいたところ、真空管アンプに10cmフルレンジスピーカーというマニアックな構成とメカニカルな外観は今でも人気が出そうな感じでした。)

やはりWestern Electricのモニター用スピーカーでの経験が佐川氏のオーディオへの想いの基本となっているようで、INAIR M360もスピーカーのように聴こえるイヤホンを開発したものではなく、スピーカーのように聴こえるイヤーデバイスを開発していたら今の形状になったということでした。

当初は通常のケーブルタイプの方のレビューを希望していたのですが、事前に商品の概略をWebで見ているうちに、これはBluetooth版の方が開発趣旨に沿った使い道ができるのではと思い、佐川氏に伝えると、快く変更していただきました。無理を言って申し訳ありません。

佐川氏にまずお話したのが、"INAIR M360"で検索したら上位に結果として見られるのが、INAIR M360は手を出さないほうがいいというページですが、という点でした。

佐川氏もこれを残念に思っておられ、それもあってか、こうして直接にこの機器の理念をお話し、装着方法についてもしっかりと伝えたいとのことのようです。

パッケージです。
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パッケージを開けた時にイヤーピース?が上を向いているのは初めてです。スピーカーは開封した時に上を向いているの同じです。これもイヤホンではなく、イヤースピーカーたる所以だそうです。

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附属品はスポンジ状のインエアーキャップ(通常のイヤホンではイヤーピースですがINAIR M360ではこう呼びます)、充電用のMicro USBケーブル、ケーブルクリップとあとは保証書と取説です。
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本体はぱっと見た感じでは通常のBluetoothイヤホンと大きく変わることはありません。ケーブル左側にリモコン(操作用パーツ)、右側にバッテリーが配置されています。左右シンメトリに重量バランスがとられています。充電用のMicro USB端子はよくあるプラスチックでカバーされていますが、使っているうちに取れてしまいそうな気がします。
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バッテリーは公称で連続再生5時間ということで、終日フルに使用するのは難しそう。個人的には家事をしている時に重宝するかなと思っています。

 

インエアーキャップはほぼ球形で、この機種の外観上の特徴かと思います。INAIR M360の外観を見て一番気になったのは、日本人では少数派ですが、他では多数派となる湿性の耳垢のことです。スポンジに耳垢が付着してしまい使えないのではと思ったのですが、後述する通りスポンジを耳奥に入れる装着方法ではないため、大丈夫なようです。それでも耳垢のタイプに関わらず、スポンジは定期的に洗浄する方がいいですね。
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インエアーキャップを外すと現れるのがエアーチューブ。ドライバー部を覆い、チューブ内で音を反響させ、全方向に拡散する役割を担っています。佐川氏は比喩として、通常のイヤホンはシャワー、INAIR M360はミストシャワーと表現されていました。
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エアーチューブを外すと本体になります。ぱっと見た感じは通常のイヤホンとはあまり変わりませんが、最も違うのは先端部にドライバーが設置されていること。ということで音導管に該当するものはありません。反対に筐体の後部、ドライバーから後ろは空洞で、ここも音を反響させる役割を担っているようです。
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INAIR M360を使う際に最も気をつけるのが装着方法。通常のイヤホンのようにスポンジ部を耳に入れたのでは開発者の意図する音を聴くことはできません。筐体全体を耳のくぼみに入れるように装着します。このあたりはなかなか言葉では伝わり難いと思いますので、下記の公式動画を参照いただきますようお願いいたします。慣れればぱっと装着できるとのことですが、最初は片手だけで耳たぶ付近を引っ張って装着してというのが手間取りました。今は少しは慣れたかなと思いますので、しばらくはベストポジションを見つけるためにいろいろ試す必要があるかと思います。

イヤホンによりますがイヤーピースとケーブルで耳に固定するタイプと違い、筐体も小さなこともあって、耳への負担は比較的小さいかと思います。

しっかりとぴったりとフィットさせる事で、30分~1時間程度するとふとした瞬間、ほとんど装着している感覚が無くなり、INAIRの最大の特徴である音響空間ごと持ち運んでいる感覚に近づけることを意図しているとのことです。ガサゴソ常に安定せず動いている状態だと、そういう不思議体験はなかなか訪れないとのことです。

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ケーブルも頬や他に触れないようにしてケーブルの存在を意識しないようにします。そうすることによりINAIR M360の存在を意識せず、音楽を楽しむことを目指していただきたいとのこと。

 

前振りが長くなりましたが、実際に曲を聴いていきます。

接続した機器はWalkman ZX300、AK 100SEと今回は普段使いしているスマホ、Pocophone F1となります。いずれも設定から簡単に接続することができました。

 

問題の低音ですが、スマホだと音量を上げると高域ばかりが目立つ感じがしますが、音量を絞り気味にすると自然な感じになります。また、SE100とZX300では低音が強いとは言えませんが足りなくはないと思います。この辺りは接続するDAPにより相性があるのかもしれません。

また音が硬いという点は確かに硬いです。このあたりは使っているうちにもう少し柔らかさが感じられる方が製品の目指す方向に合うのかもしれませんが、当方は硬い音が好物なので今のままでいいかなと思っています。

 

INAIR M360と相性が良い曲を選ぶと、不思議な音楽体験が得られます。ケーブルが身体に触れないようにしてしばらく聴いていると耳の筐体もあまり意識しなくなります。その状態だと耳の周囲に音楽が拡がっている、纏わる感じです。通常のスピーカーだと当然のことながら、顔の向きを変えると音源は変わらないので聴こえ方が変化しますが、INAIRでは音源が一緒に動くので音も自分と一緒に移動します。確かにイヤホンでもスピーカーでもない、新しい音楽体験と言えるのかな。

ただ、全ての曲でそのように聴こえるかというとそうでもないのが悩ましいところ。どういう曲が合っているかどうかをいろいろなジャンルの曲を聴いて試している状態です。

 

佐川氏からは、しっかりと正しく装着することで低音から中域、高音までナチュラルで完全にフラットな状態を目指した音作りをしており、どの帯域も持ち上げず、強調せず、最も録音された原音そのままが鳴るような構造にこだわり、どちらか言うとモニタースピーカーに近いサウンド傾向にあると伺っていますので、装着方法や場合によってはイコライザーを少し利用するなどしていろいろと試していきたいと思います。

 

なお、佐川氏によればもちろんさらなる展開を考えておられるということですので、INAIR M360の発展型か、それとも全く違うイヤーデバイスになるか、楽しみに待ちたいと思います。

INAIR インエアー方式 イヤースピーカー ブラック M360BK
 
INAIR インエアー方式 イヤースピーカー シルバー M360SV